70年代の退色ネガフィルム

ネガアルバム

 

かなり進行した退色ネガを作業させて頂きました。

 

写真のように大事にアルバムに保管されていたネガですが、フィルムは識別のバーコードが入っていない1983年以前製造のフィルムです。

恐らく、70年代かと思われますが、かなりの退色進行具合がフィルムを見ただけで分かるほどでした。

また、ハーフサイズなのでフィルムの面積が半分で色情報量も半分での退色進行です。

 

大抵の退色フィルムはRGBのブルー(B)色の中間からライト側を調整すればそこそこ色が戻るのですが、このネガはそうはいきません。レッド(R)色のシャドーも調整しないと正常な色調に近づきません。

それだけで済むわけではありませんが。

普通ならPhoto ShopにてYMCK環境で補正したいところですが、料金が膨大になりますのでスキャナー内のトーンカーブで出来る限りの補正です。(通常はこれで何とかなるのですが)

 

中にはライトから中間までのブルー色、レッド色の色情報が失われ、シャドー部しか残っていない画像もあり、通常は肌色中心に補正を掛けるのですが、そういうものはシャドーのバランスを整える事しかできません。

 

そういう訳で何だかんだといつもの倍以上の時間が掛かってしましました。

 

通常はフィルム毎に基本補正カーブを決めてそこからコマ毎に微調整をするのですが、今回に限りその手も殆ど使えません。1点1点丁寧にコマの状況に合わせて補正です。

 

カビの発生もあり綺麗に戻ってもカビで台無しという画像もしばしば…。

どうにか苦労して1冊分のネガをデータ化して納品。

 

お客様も古いネガの状態を理解されているようで。

「綺麗にデータ化されていました」とメールにてコメントを頂き一安心でした。

 

写真・劣化・黒色化

サイトを運営している関係上、毎日当サイトへのアクセス解析をしています。

1日のアクセス数やどのようなキーワードで検索して当サイトにたどり着いたかを調べたりしています。

つい先日「写真・劣化・黒色化」というキーワードで検索されている方がいらっしゃいました。

 

お問い合わせ頂いた訳ではないので何処の誰だかわかりませんが「黒色化」というキーワードは初めてなので気になりました。

 

「黒色化」というのは現像された写真が黒色化したのか、ネガフィルムが黒色化したのかが分かりません。

通常現像された写真は時間と共にコントラストが落ちて薄くなってくる筈なので、黒色化したのならそのメカニズムを知りたいと興味が沸きました。

 

それともネガフィルムの黒色化なのでしょうか?

それなら考えられます。

 

フィルムは退色し始めると全体的に紫色になってきます、それを画像化すると全体が黄色くなっています。

ブルー層の退色が進んでいるためです。

 

そのような場合はブルー層の感度を上げてあげると良い感じに色再現が出来る場合があります。

それは多少なりともブルーの色情報がまだネガフィルム上に残っているからです。

 

それ以上に退色したフィルムは滅多に見ませんが、もしネガフィルムが黒色化しているなら各色層全てが退色して黒くなっている可能性がありますね。

 

退色したフィルムをデータ化すると時々黒くなったコマを見かけますが、それは夏の海辺やプールでの写真で直射日光や反射光の強い所で撮った写真です。

そのような写真はシャドー部の色の厚みが無いため簡単に退色して色情報を失っていて元に戻せない場合が殆どです。

 

多分黒色化したネガフィルムをデータ化しても全体的に薄い単色っぽい画像が表れるだけかもしれません。

一度拝見したいなと気になるキーワードでした。

 

日本は湿気が多いのでフィルムの長期保存には適さない環境です。

空気が循環しない押し入れの中に入れっぱなしで、防虫剤等と一緒に保管されている場合はもっと条件が悪くなります。

防虫剤の薬品成分がフィルムの乳剤面を劣化させるためだそうです、みなさんも気をつけて下さい。

 

写真は過去に連れ戻してくれるタイムマシーンの役割をします。

大切に保管しましょう。