印刷品質(2)

印刷品質の続き…

どれだけ違うのか見せて貰うと「う〜ん?比べてみればちょっと赤いかな?」と言う程度の物が大半で単独で見た場合、いつもの色と違うと気が付く消費者は皆無だと思います。

仮に気が付いたとしてもコーポレートカラーの赤味が若干強いので気になるからこのパンフレットの商品を買うのをやめよう…なんて言う人がいるのでしょうか?

消費者にとってコーポレートカラーの色が少々違っていてもどうでも良いわけで、気がつく人も皆無だと思います。そんなことで何万部も刷り直して、無駄な廃棄物を出してCO2をバラまかれたのではたまった物ではない。商品のパンフレットを受け取る側に必要なのはその商品の情報だけです。

紙は半導体のように精密部品ではないのです。極めてアナログな媒体なのです。

日本製のオーバークオリティの最たる物ですね。

何故そんな事で刷り直すのか?

多分、担当者が上司から突っ込まれないように万全を期そうと思っているか、又は単に担当者のこだわりでしょう。

しかしそこには消費者は不在で、自分の自己満足や立場の保全を最優先している…としか思えない現実が垣間見えてしょうがないのですが。

でもさすがに昨今は不況の影響で各社の印刷物にかける予算も減り、値段で印刷会社を選ぶ時代になってきたのでそう言う事も少なくなってきたようですが。安い分あまりワガママも言えなくなってきているようで…。

印刷会社さんも175線オフセットでは値段が取れなくなってきたので、300線やFM印刷(網点の大きさではなく数で濃淡を表す印刷方法)で高品質に向けた差別化をしてきています。

こちらはまだ値崩れしていないようで「良い物が欲しかったらそれなりの値段を払え」が通用しているようです。

何事も差別化ですね。

印刷品質

長い間製版会社に身を置いていた関係もあり、印刷物の刷り直し事例を聞くのは日常茶飯事でした。

製版とは印刷する際のハンコのようなもので、インクの乗る板の事です。4色の場合は4枚の板は黄色、赤、青、黒、に分けられて全色が重なって通常の色になります。

その色配合によってインクの乗る量を調整し微妙な色調整を行っております。

日本は印刷物の色調に関しては世界でもっともシビアな要求をしてくるお国柄だけあって、印刷品質に関しては世界一だと思う。

しかし日本の印刷の品質を支えている、零細企業も含めた印刷会社の平均利益率が1%台(2011年度)だというのは悲しい現実ですが。

確かに日本の商品パンフレットは綺麗です。

出ている商品の色で購入意欲が沸いたりしますから、商品の忠実な色の再現はそれを見る消費者にとってもメリットがあります。

私なども一眼レフカメラ(勿論フィルムカメラの頃)を選ぶ際、大口径58ミリF1.2の標準レンズのレンズ面がかすかな緑色(コーティングの色)に輝くミノルタSR-Tのパンフレットを見て、「かっこいい〜これ欲しい」と思った程ですから。

その色を出す為色々な技を駆使し校正を何度も重ねます。ここまでが私たちの仕事でした。

そしてOKが出た校正を印刷会社さんが校正紙に合うように印刷する訳ですが、印刷機が紙にインキを載せると紙がインキを吸い込む際にじみが出てしまいます。

これがドットゲインと呼ばれるもので、いくら印刷の元データをデジタル管理しても出力はアナログなので多少の誤差は必ず発生します。

厳密に言えば1部1部違うと言っても良いでしょう、その印刷の色のばらつきをΔEという記号で表しΔE3以内に納めるのが理想です。

しかし中には殆ど見分けが付かなくなってくるΔE2以内でないと納得しないお客さんもいるようです。

大企業ほど色調にはシビアです。商品の売れ行きに影響を与える訳ですから仕方ありません。

しかし理解できないのが、コーポレートカラーに異常にシビアなクライアントもいるわけです。

要するに企業のロゴの色やイメージカラーですね。

他に落ち度が無いのにコーポレートカラーの色が違うので「刷り直せ」となる事です。

 

長くなるので続きは次回と言う事で…。